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三重大テクノロジーチャンネルより

     

詳細は産学マッチングナビ「作物の収穫量増加につながる成育特性の解明」

三重県のダイズ在来品種‘美里在来’の収量改良に向けた受光態勢の解析

三重県のダイズ在来品種‘美里在来’の収量改良に向けた受光態勢の解析

ダイズでは、ダイズ集団(群落)の中の全ての葉に効率良く光を当てることが収量を良くする(増やす、或いは安定させる)上で重要であると言われています。

三重県の在来品種‘美里在来’は、群落の上層に葉が集中し易く、葉自身も垂れており、光の当たり方に優れない群落構造になっていることから、これが収量に悪影響を及ぼしていると予測されました。

しかし、光の良し悪しを判断する指標となる「吸光係数」を算出し、立った葉が群落内各層にほど良く分布し、毎年安定的な収量性を示すフクユタカと比較したところ、両者の間に明確な差が認められませんでした。

そこで私たちは、「美里在来では、葉への光の当り方は良くても光合成産物が効率良く子実生産に利用されていないのではないか」と考え、以下の2点を確認する実験を進めています。

1)子実生産期間中に茎葉の成長点を除去して、同期間中には子実のみを成長させると、収量は上がるのか?
2)群落内に光が入っていても、子実が沢山ついた茎(厳密には節)から伸長している葉に光が本当に当たっているのか?

ダイズの受光態勢の構成要素に及ぼす水条件の影響

ダイズの受光態勢の構成要素に及ぼす水条件の影響

「葉をどうやって立たせるか?」そして、「ダイズ集団(群落)の中の上層に密集する葉をいかにして群落内各層へ均等に散らすか?」これがダイズの葉全てに光を当てて、効率良く光合成と子実生産を行わせるために重要となります。

イネでは、葉を立たせる遺伝子が存在することが確認されてており、ダイズにもこれと同じ機能を持つ遺伝子が存在するのかもしれません。しかし、私たちは、調位運動と言う、マメ科特有の向日運動だけでなく、それ以前の葉の立ち方も栽培条件あるいは栽培時期によって変わっていることに気が付き、葉や茎(厳密には葉を支える葉柄)の水の量によって調位運動前の葉の立ち方が変化していることを確認しました。

群落内での葉の分布の仕方も土壌水分条件によって変わることが分かっていますので、「土壌の水分状態を通じてダイズの葉への光の当たり方をどの程度コントロールできるのか」を現在研究しています。

ダイズ品種‘美里在来’子実生産における光利用効率について

技術職ダイズ品種‘美里在来’子実生産における光利用効率について

収量を良くする(増やす,或いは安定させる)ためには、ダイズ集団(群落)の中で密集している全ての葉に対していかに光を均等に当てるかが重要です。しかし、仮に光が均等に当ったとしても、光エネルギーを使って炭水化物を作る光合成能力、炭水化物を子実生産部位まで送る(転流)能力、或いは子実そのものを作る(子実生産)能力に劣ると、光の当たり方を良くしても収量は良くなりません。

収量が安定しない三重県在来品種の‘美里在来’は、西日本で広く栽培されている‘フクユタカ’に比較して、

1)光合成,転流,子実生産のいずれかの能力が劣っているのか? 
2)美里在来が効率良く子実生産を行うためにはどの程度の光の強さが必要なのか?

これらを明らかにするため、遮光幕を使って数段階の光条件に晒した両品種の収量を解析しています。